「作り手の体現する大きな母性が、成型された練り粉に入り込み、食する人々を一つの輪につなぎとめる」(引用)パスタの社会的な底力。「パスタとは、単純そうでいて、なかなか手のかかった洗練された料理である。」
「食べると言う行為が、物質とその栄養分だけでなく、記憶や関係をも食べ、どうかすると言う行為であると言うのが正しいなら、この成型作業は、その宇宙・自然・人間の関係を調整する想像力の営為でもあろう」そして「マンマのファンタジーア」。
「寛容で、親しみ深く、争いを避ける国民性」は、マンミズモ、即ちイタリア的母性的な社会に根ざす「パスタ感覚」によるところが大きい。反イタリア運動などは聞いたことがない、模倣したいと憧れこそあれ。食文化を、このように時間軸と空間軸で分析しながら、幻想のイタリア料理の中に底流を見出す試みは興味深いものがあった。
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